Trust Me
アイドルマスターと聞いて思い浮かべる曲と言えば
「READY!!」だったり、
「お願いシンデレラ」だったり
「Brand New Theatre」だったり
「Reason!!」だったり
王道な物を思い浮かべるかもしれません。
もしくは、誰かの担当であれば、
その担当の歌う曲を思い浮かべる人も多いとは思います。
そんな中で私が紹介したい曲は、
アイドルマスターシンデレラガールズの「Trust Me」という、多分この記事が出ている頃はシンデレラガールズの中で一番新しい楽曲です。
まずこの曲が「アイドルマスターシンデレラガールズの中でどう言った理由で登場したか?」について。
アイドルマスターシンデレラガールズには「シンデレラガール総選挙」というイベントが存在します。
某48みたいなアイドル同士の人気投票を行うイベントであり、その中で「シンデレラガール」という称号を競い合うのですが、
この曲は言わば「その総選挙で属性上位になった9人のアイドルが歌える曲」であり、イメージとしては「恋するフォーチュンクッキー」に近い立ち位置にある曲だと言えると思います。
しかし、この曲はそんな「みんなで踊れる楽しい曲」や、最初に上げた「アイドルマスターの王道曲」からは遠く離れた曲に仕上がっています。
いきなり始まるのはエレクトロのイントロ。
だんだんとゲインが焦らすように上がり始め、期待感が最高潮に達した時、まず耳に入るのは暴れ倒すドラムとベースのサウンド。
荒れ狂うギターリフとエレクトロのイントロを抜け、曲が始まると強い言葉で彩られたラップ調の歌詞。
ヘヴィでラウドでメタリックなポストハードコア・ラップコア・ニューメタルと言って良いこの一曲に「アイドルらしさ」は皆無であり、インスト版に至っては、私の感想は「ただの僕の普段聴いてるバンドやん」でした。
こんなアイドルらしさの欠片も無い曲の作詞、作曲、編曲したのは「ゆよゆっぺ」先生です。
元々はボーカロイドで曲を作っていたボカロPの出身で、
それをきっかけにセルフカバー(歌ってみた)やバンド活動を経て、現在はDJ活動や作詞作曲をやっているアーティストさんです。
シンデレラで特にウサミンこと安部菜々のPやシュガーハートこと佐藤心のPには聞き覚えがあると思いますが、『ヤレんのかオマエら!!』『イケんのかオマエら!!』と客煽りをする事でお馴染みの「凸凹スピードスター」での作詞作曲を行なっており、そこで見た事があると思います。
しかし、きっと思うでしょう。
「凸凹スピードスターの感じと全く違う」と。
「凸凹スピードスター」の曲は確かに音圧強めではありましたが、範疇としてはエレクトロポップ、アイドルソングの範疇に収まった、ちょっと電波で癖になる、安部菜々、佐藤心の二人らしい一曲になっていました。
しかし、コレから「Trust Me」に至るイメージまでは湧かないでしょう。
しかし、ゆよゆっぺ先生を知っていた人からすればTrust Meの方が「普段のゆっぺじゃん」と言う事でしょう。
と言うわけで、少しだけ「ゆよゆっぺ先生がどんな曲を作っていたか?」と言う参考動画です。
「Story of Hope」
「What is Liberty to You」
ゆよゆっぺ先生がボーカルを務めてた「My Eggplant Died Yesterday」の曲。
「Reon-Remind」
如何でしたでしょうか?
ゆよゆっぺ先生を知っている知人に「凸凹スピードスターの方が無理してる」とまで言われる始末。
この「ゴリゴリなサウンドにエレクトロを乗せたポストハードコア、エレクトロニコア、トランスコア」がゆよゆっぺ先生の本来の持ち味であり、曲調だと自分も思っています。
そうなってくると、こんな疑問が湧いてくるかも知れません。
「何故、今の時期にアイドルらしさ、アイドルマスターらしさの欠片も無い曲が、そっちを作れる作曲家を採用してまで、イベントのご褒美とも言える楽曲に使用されたか?」
この部分を語るには二つの面があると私は考えています。
“シンデレラガールズの内側の面”と“アイマスでは無い外側の面”です。
シンデレラガールズの内側の面ですが、
まずこの曲が出る少し前に「ガールズ イン ザ フロンティア」と言う楽曲があり、カッコいい曲調と強気な歌詞で話題となりました。
その中でこんな歌詞があります。
「自分の足で歩けシンデレラ」
正直な所、この歌詞を聞いた時、「なんだこの歌詞」と思いました。
アイドルマスターは、「アイドルを自分の手で育てる」のがコンセプトであり、「二人三脚でトップを目指して行くゲーム」なのに、一人で行けとは随分と...と、私は感じました。
しかし、先日のナゴヤドーム公演を見て、その意味が少しだけわかったような気がしました。
「このゲームはもう成熟している所まで来ているのかな?」と。
実際、ナゴヤドームを二日間を成功させ、
楽曲も100曲がオリコントップ10に入る結果を出し続け、
話題性と言う意味でもライブ後にツイッターのトレンド全てを席巻し、
名実共に、アイドルマスターシンデレラガールズと言うコンテンツは「有名なコンテンツ」だと言えるでしょう。
最低でも「中居くんやゆずがCMやってたゲーム」くらいの認識はされていると思っております。
そんな中で、「ガールズ イン ザ フロンティア」、並び「Trust Me」には、「7周年から8周年、そしてその先に対する決意」みたいな物があるのではないでしょうか?
守るべきは過去じゃない=私達は先の未来を見ている。
そして Trust Me=私達を信じて着いて来て欲しい。
そんなメッセージがもしかしたらあるからこその強気な楽曲だったのかも知れません。
そしてもう一つの面、「アイマスではない外側の面」ですが、
ここに関しては、あくまで私の考えではありますが、
「近年の若者の流行」と「BABYMETALの成功」があるのではないかと私は考えています。
まず流行に関して、
数年前から邦楽の界隈では「ロックミュージック」が名前を残すようになって来ました。
アジアンカンフージェネレーション、サカナクション、RADWIMPS、[Alexandros]、Bump Of Chickenなど、そう言ったバンドの名前がテレビでも上がる事が多くなりました。
その中でも特に成長目覚ましいジャンルが「ラウドロック」「メタル系音楽」のジャンルです。
RIZE、Dragon Ash、Pay Money To My Pain、FACT、そしてONE OK ROCKから始まったこの流れは、80年代のブルーハーツ、90年代のHi-STANDARD、00年代のELLEGARDENが出て来た時のように、新しい“若者達のスター”を生み出しました。
中には海外のレコード会社やレーベルと契約を果たしたバンドや海外でライブツアーを行ったバンドも多く、
イベント等でもオズフェス、スクリームアウト、ノットフェス、そしてワープドジャパン等の海外アーティストを呼べるイベントも出来るレベルにまで成長を果たしております。
そして、その流れの中で「大成功したアイドル」がBABYMETALです。
日本のアイドルとメタルを組み合わせたこのユニットは今や母体となったアイドルグループよりも大きくなり、海外の大型メタルフェスやロックフェスで厳つい海外のメタラー兄貴達をヒーヒー言わせ、大物メタルアーティストにも絶賛されるムーブメントを巻き起こしています。
BABYMETAL : Distortion
そして、この流れが現実のアイドル、そしてアイドルゲームにも流れて来ていると私は感じています。
実際、近年になってドラムやベースの音がやけにしっかりしたアイドルを見かける事が多くなりました。
最近だとPassCord辺りが様々なロックイベントを荒らし回っていると噂で聞いています。
さらにアイドルゲームコンテンツでも、
ラブライブでは「既存楽曲のメタルアレンジ楽曲」が存在していたり、
ナナシスでは「アイドルゲームなのにバンド形態でボーカルだけが歌う楽曲」が存在していたり、
近年配信されたゲームの8beat Storyではパンク、メタル専門のフリーペーパーとして有名な激ロックにインタビューされたユニットが存在したりと
こう言った状況が続いており、
その中で、一番「パンクス、メタル等のジャンルを歌わせやすいアイマス」がシンデレラガールズだったのではないでしょうか?
実際、星輝子というメタル系アイドルが存在しているのもシンデレラガールズです。
そういう前例も、この曲調が採用される下地にはなっていたのではないでしょうか。
そして、この二つの面が重なった事で、
アイドルらしさのない、エグエグなギターリフとブリブリとしたベースとバチバチとしたドラムにエレクトロを組み合わせ、強気の歌詞で綴られた「Trust Me」と言う曲が生まれたのではないでしょうか?
最後に。
私が何故この曲を選んだのか。
それはこの曲が私にとってかなり感慨深い、思い入れの強い一曲になったからです。
私は、この「アイドルマスターシンデレラガールズ」の中で鷹富士茄子の担当Pを名乗っており、そんな茄子さんの「初めての曲」の一曲が、この「Trust Me」となったからです。
加えて、私はアイマスをやる以前から激しい音楽が好きで、洋楽邦楽問わず様々なパンク、ハードコア、メタル、と言ったジャンルを聴いて来ました。
つまり、「自分の好きなアイドルが自分の好きなジャンルを歌う」という一人のファンとしては夢のような一曲が出たのです。
皆さんも、Trust Meをきっかけに「アイドルマスターシンデレラガールズ」や「音楽」に興味を持って貰えたら、どっちものファンとして嬉しい限りです。